ハリウッドスターや超富裕層、大企業のオーナー社長などが利用しているイメージが強く、日本ではあまり馴染みのないプライベートジェットですが、実は近年、日本においても利用拡大の動きが見られます。
実際、プライベートジェットを活用する民間企業は増えてきており、タイトな旅程で海外の複数の都市を周遊するときの移動手段としても利用が進んでいます。また新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、「感染リスクの低い安全な移動手段」としても注目されています。自家用ジェット、ビジネスジェットなどさまざま名前で呼ばれているプライベートジェットですが、どのような特徴とメリットがあるのでしょうか。
この記事では、以下4点について解説します。
- 「プライベートジェット」と「定期便」の違い
- 渡航先や用途によって異なる4種類の機材
- プライベートジェットの長所・短所
- プライベートジェット活用シーンについて
「プライベートジェット」と「定期便」の違い
プライベートジェットとは、お客様のご要望に合わせて渡航先まで就航するジェット機のことでビジネスジェットとも呼ばれます。チャーター(貸切利用)することで定期便と比べて柔軟性があり、「時間価値」を高め、ストレスから解放される究極の移動手段です。つまり、定期便は“みんなのためのフライト”、プライベートジェットは“あなたのためのフライト” と言うことができるでしょう。
定期便との具体的な違いを比較
【違い①】渡航先・運航スケジュールの柔軟性
プライベートジェットの大きな特徴の一つが、渡航先を柔軟に選べること。定められた空港にのみ就航する定期便に対し、プライベートジェットは渡航先に最も近い空港までダイレクトに運航することが可能です。
また、定期便は発着時間が定められていますが、プライベートジェットは定期便が就航していない区間・時間帯のフライトが可能なので、利用者の予定を最優先したスケジュールで利用できるのが大きな特徴です。
【違い②】移動中の時間を有効活用できる
定期便は多くの利用者が乗り込むため、機内は「パブリックスペース(公共の場)」となります。対して、プライベートジェットの機内は関係者のみの文字通り「プライベートな空間」ですので、周囲に気を遣う必要がありません。この「プライベートな空間」という特性を生かした、さまざまな利用方法があります。
たとえばビジネス目的の場合、“移動するオフィス”として活用できます。発着する直前まで商談準備や打ち合わせが可能で、忙しいビジネスパーソンにはおすすめです。
家族や友人と旅行などで利用する場合、小さなお子さまや乳幼児と一緒だと周囲に気を遣うことも多いでしょう。しかし、プライベートジェットならその心配がありません。飛行機にペットを預ける際は基本的に貨物室に入れられてしまいますが、プライベートジェットならケージに入れておけば機内で一緒に過ごすことも可能です。
また、大型機の個室にはセミダブル以上のベッドが付いており、ホテルの寝室並みです。
【違い③】スムーズな搭乗手続きが可能
プライベートジェットを利用する際は定期便とは異なる専用動線を利用できるので、秘匿性が担保され、感染リスクを低減することが可能です。国外への渡航時、手荷物検査や出入国管理の長い列に並ばずに済むため、定期便に比べて搭乗手続きに要する時間を大幅に短縮でき、スムーズに搭乗できます。国際線のチャーターなら出発15~30分前の到着でも間に合います。
渡航先や用途によって異なる4種類の機材を解説
プライベートジェットの機材は、大型機・中型機・小型機・超大型機の4つに分けられます。それぞれの種類ごとに、代表的な特徴をチェックしておきましょう。
機材ごとの価格と具体的なスペック
①大型機
東京から欧米各都市までのフライトをノンストップで直行可能です。機内は広く、オフィスや寝室としても使用できます。客室乗務員も同乗し、機内サービスを提供します。
②中型機
アメリカ東海岸から西海岸までフライト(約6時間)を給油無しで飛べる中型機は、北米・欧州エリア内の移動に適しています。出発時刻や混雑状況に縛られることなく、ストレスフリーなフライトが可能です。
③小型機
小型機は、2~3時間といった短時間のフライトに適しています。例えば羽田から北海道の移動であれば、給油無しで移動が可能です。
④超大型機
プライベートジェットのなかで、もっともサイズが大きい機材です。座席数が多いため、企業報奨旅行や招待旅行、スポーツチームの移動など、多人数での移動に利用されています。
種類 | 代表的な機材 | 特徴 |
---|---|---|
大型機 | Gulfstream G650 Global 7500 |
最大搭乗人数は19人、航続距離は約13,000㎞。機内の高さは約1.9mと、ビジネス機のなかでも最大級の機内空間を誇ります。 |
中型機 | Challenger 350 Gulfstream G280 Falcon 2000 |
搭乗人数は8~10人、航続距離は約5,000km。世界のトップ企業やチャーターオペレーターに利用され続けており、騒音を最小限に抑えた機内では快適な時間を過ごすことができます。 |
小型機 | Honda Jet Ciation M2 |
搭乗人数は4~6人、航続距離は約2,500km。小型ジェット機ながら、十分な広さと優れた乗り心地が特徴的な機材です。 |
超大型機 | Boeing Business Jet (BBJ) Airbus Corporate Jets(ACJ) |
搭乗可能人数は20人以上、航続距離約10,000㎞。欧米には1回の給油にて移動可能です。機材によってはシャワールームを備えています。 |
プライベートジェットの長所・短所
ここからは、プライベートジェットの長所と短所について具体的に見ていきましょう。
プライベートジェットの長所
- 時間短縮
定期便が就航していない区間や時間帯でもスケジュールを組むことができるので、出発まで無駄な時間を過ごさずに済みます。 - 柔軟なスケジューリング
出発当日に急な予定変更が生じても心配ありません。プライベートジェットなら、急な出発時刻の変更や、フライト先の変更にも柔軟に対応できます。 - プライベートな空間
機内には関係者しか搭乗しないため、機密情報を含んだ商談や会議なども可能です。また、小さなお子さまや乳幼児、ペットを連れていても、周囲に気を遣うことなく過ごすことができます。 - 感染リスクを抑えた移動手段
不特定多数の部外者と関わらない、完全なプライベート空間である機内は常に換気され、感染リスクを低減します。
プライベートジェットの短所
利点の多いプライベートジェットですが、短所としては以下の点が挙げられます。
- 費用がかかる
ANAビジネスジェットの場合、東京-新千歳間の往復(中型機)で約600万円以上、東京-ニューヨーク間の往復(大型機)で約6000万円以上のチャーター料金がかかります。プライベートジェットの利用には高い費用がかかりますが、その分定期便にはない非常に大きなメリットを得られることが、多くのお客さまに選ばれている理由です。 - 事前手配に時間を要する
オンデマンドなフライトを提供するプライベートジェットですが、チャーターする場合にはジェット機の選択から出発時間、ルート、渡航先、設備に至るまで、事前にフライトプランの詳細を決める必要があります。国・空港によっては運航許可の取得に数日を要する場合があるため、余裕を持ってお申込みすることをおすすめします。
日本におけるプライベートジェット利用拡大の動き
近年、国土交通省をはじめ、国を挙げてプライベートジェットの利用環境の改善に向けた動きが始まっています。※1 ※2
その流れを受けて、プライベートジェット機を所有する日本企業が増加していることをご存じでしょうか。
また世界の大手定期航空会社でも、自社路線の有望なフィ-ダー(ハブ空港とそうでない空港を結ぶ路線)として、プライベートジェット機の価値に着目する会社もあり、すでに一部では、自社あるいは子会社でその分野に進出する企業も出ています。
このようにプライベートジェットの利用環境が整い始めていることから、日本でも活用の動きが高まってきているのです。
※出典1:「ビジネスジェットの受入促進」(国土交通 省航空局)※出典2:「日本におけるビジネスジェットの現状と展望」(一般社団法人 日本ビジネス航空協会)
プライベートジェットの活用シーンはビジネスだけじゃない?
プライベートジェットは、移動時間の短縮や柔軟なスケジューリングが可能な点、プライベートな空間や高い安全性が保持できるといったメリットを生かし、時間が限られている企業のトップや政治家、重要人物との重大かつ急ぎの交渉を控えているビジネスパーソンなどが活用するほか、周囲の目から逃れることを目的に、有名アーティストやスポーツ選手、起業家といった著名な個人が、移動手段としてプライベートジェットを利用するケースもあります。
また著名な個人でなくとも、「移動中も家族だけでリラックスして過ごしたい」「さまざまな観光地を無駄なく巡りたい」などの理由から、家族旅行や観光、周遊などのレジャーシーンにおける活用も広がっているのです。
定期便からは得られない大きなメリットがあるプライベートジェット
限られた渡航期間の中で効率的に時間を使いたい方、周囲に気を遣うことなく移動中から旅を楽しみたい方にとって、プライベートジェットは最適な移動手段となります。
ANAビジネスジェットでは、プライベートジェットを「時間価値を高める移動手段」として捉え、お客さまの貴重な時間を最大限に有効活用することを目指しています。そしてANAグループの経営理念である「安全・安心・信頼」を基礎とし、チャーター運航会社をはじめとするビジネスパートナーとの強い協力体制のもと、お客様のご要望・ご期待に的確にお応えするオンデマンドなサービスをご提案させていただきます。
定期便では得られない、実に多くのメリットを持つプライベートジェット。ビジネスに、プライベートに、時間価値を最大限に高めるプライベートジェットをぜひ活用してみてはいかがでしょうか。